【この世界の片隅に】クラウドファンディングから考える新たなアニメビジネスの世界
2017/01/03
映画『この世界の片隅に』を先日観てきました。
映像、キャラクター、声、音楽、ストーリー、どれも本当に素晴らしく、目頭を熱くさせる感動をくれた映画でした。僕は上映から1、2週間が経っていましたが、それでも上映後に拍手が鳴り止まないほどでしたよ。
とても映画が好評のようで、2017年には上映館がさらに増えていくそうです。
この映画、作品の良さも去ることながら、製作に必要な資金調達でクラウドファンディングを行ったことでも話題になりました。
今回は『この世界の片隅に』大ヒットの要因であるクラウドファンディングについて考えていきます。
◼︎ざっくり説明「クラウドファンディングって?」
クラウドファンディングは、インターネット上で募る募金のようなシステムです。例えばベンチャー企業や映画製作者が、その事業の魅力を伝えます。それに同意してくれた人が1口何円といった形でお金を寄付するといった資金調達の方法です。
主にお金の支払いには3つの種類があります。寄付型・投資型・購入型です。完全に寄付するという形、現金での配当がある投資型、関連グッズやイベント参加の権利などの特典がもらえる購入型といった具合で資金を調達します。
アニメーション作品においても事例がいくつか出てきています。過去には『リトルウィッチアカデミア』や、『バジリスク甲賀忍法帖』がクラウドファンディングでの資金調達を行った実績があり、その結果は成功・失敗とあるようですが、新しいアニメ製作の資金調達として注目されています。
続いて、クラウドファンディングがなぜそこまで注目されるのか。その特長やメリットについて考えていきます。その前に、参考にさせていただいたサイトをご紹介します。こちらもぜひご覧ください。
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【ここには、上から目線が存在しない。~『この世界の片隅に』プロデューサー・真木太郎氏に訊く~】
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sakaiosamu/20161229-00065989/
このほかに、株式会社GENCOの真木太郎氏らが発行する専門誌「アニメビジエンスvol.8」も参考にさせていただきました。
◼︎C2Cという新しい概念
上記のサイトで、プロデューサーの真木さんはクラウドファンディングを「Creator to Consumer」だと言っていましたね。とても興味深い表現です。
『C2C』という言葉は、ビジネス間での立場を表す言葉です。通常は「Consumer to Consumer」(一般消費者to一般消費者)という意味で用いられます。つまり消費者間での取引ですね。
クリエイターが発信する時代だとおっしゃっていたプロデューサーの真木さん。今回の映画でクラウドファンディングによる相乗効果は、一つの成功例を見ることができました。
クリエイターが消費者に向けて発信し、価値観を共有する。つまり作品を作っているだけでなく、消費者の声に耳を傾け、映画作りを消費者と共有することで、マーケティングの効果も出てくるということです。
これを踏まえ、クラウドファンディングのメリットをまとめてみました。
◼︎一石二鳥どころじゃないクラウドファンディングのメリット
アニメーション製作に限らずに、クラウドファンディングでの資金調達をすることのメリットは以下のようになります。これが全てではないかもしれませんが、暫定的にまとめてみました。
・資金調達ができる。
・支援してくれた人を知ることで市場のリサーチができる。
・どんな商品がウケるかがリサーチできる。
・お客様の声を集められる。
・SNSによる口コミによって認知される。
・企業からの資金援助も期待できる。
各メリットがうまく発揮されることで相乗効果が見込め、資金調達・作品製作、マーケティングにおいてプラスの効果を出すことができます。
個人的にはマーケティングの面での有能さが目立つなぁと感じました。
支援してくれた人に対して商品のサンプルA/Bを提供し、どちらの商品がたくさん選ばれたかといった測定し、商品のさらなる改良にあたる。こんなA/Bスプリットテストができます(これはアニメ作品ではできないかもしれませんが、関連グッズなどには有効ではと思う)。
SNSによる口コミで商品の認知度が上がれば、それをネタに大きな企業へJV(ジョイントベンチャー)や資金援助を掛け合ってみる(製作委員会への出資企業、出資額を増やせる可能性がある)。
お客様の声を支援してくれた人にお願いする。その声を商品の宣伝に載せて、見込み客に信用を与える。
こんな具合に、クラウドファンディングを皮切りに様々なマーケティングの仕掛けをすることができます。これは一石二鳥どころではありませんね。
◼︎アニメビジネス界に生まれた新たな流れ
映画『この世界の片隅に』の成功でアニメーション製作に大きな流れを生んだクラウドファンディング資金調達だけでなく、マーケティングも担うことができるという証拠にもなりました。
映画を鑑賞するだけでなく、それを伝道者として他の人に勧める。情熱を持ったクリエイターと顧客が共に作品を作り上げていく。
彼らの間には映画が出来上がる過程を通して一体感が生まれ、かけがえのない体験をする。クラウドファンディングの計り知れない可能性を感じることができた映画でした。
まだ観ていない方はこの機会にぜひ映画館に足を運んでみてください。
それではまた。